不動産オーナーができる節税対策とは?ポイントを解説

賃貸経営をされているオーナー様の中には、「所得税や将来の相続税をもっと抑えられないか」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。 今回は、不動産オーナー向けの代表的な節税スキームである「建物所有方式(法人化)」について、仕組みとメリット・注意点をわかりやすくご紹介します。

建物所有方式とは?

建物だけを新しく設立した法人に売却し、土地は今まで通りオーナー個人が所有したまま法人に貸し出す方法です。 家賃収入の受け皿を「個人」から「法人」に切り替えることで、税負担の最適化を図ります。

期待できる3つのメリット

① 所得税の負担が軽くなる 家賃収入が個人から法人に移ることで、個人の所得税(所得が増えるほど税率が上がる仕組み)の負担を抑え、法人税率との差額分の節税効果が期待できます。

② 将来の相続財産を増やさない 新しい法人の株主を子供など次の世代にしておくことで、今後積み上がっていく家賃収入や純資産の増加分は、子供側の財産になります。オーナー様ご自身の相続財産がこれ以上膨らむのを防げます。

③ 家族全体の手取りを増やせる 法人から役員報酬を支払うことで、法人側は経費にでき、個人側も給与所得控除が使えるため、ご家族全体で見た手取り額を増やせる可能性があります。

株価を抑える仕組みと最新ルールの注意点

法人の株価の計算上、不動産等の含み益については、一定の法人税等相当額を控除して株価を評価できる場合があるなど、評価額を抑えやすい仕組みがあります。

【最新ルールの注意点】 令和6年からは、区分所有マンション(タワーマンションなど)について市場価格との乖離が大きい場合、相続税評価額が概ね市場価格の60%水準を下回らないよう補正される制度が導入されています。※一棟アパートや戸建てにはこのルールは適用されません。 また、会社の資産に占める不動産の割合が大きすぎると、有利な評価方法が使えなくなる制度もあるため、事前の資産バランス調整が必要です。

実行時に気をつけたい税務上の落とし穴

このスキームは効果が大きい分、税務署から指摘を受けやすいポイントもあります。

  • 建物の売却価格 建物の売却価格は、時価や帳簿価額などを踏まえて合理的に決定する必要があります。関連当事者間取引で著しく低い価格(あるいは高い価格)を設定すると、法人側で受贈益課税などが生じる可能性があります。
  • 土地の使用料(地代) 法人がオーナー個人の土地をタダで使うと、高額な課税を受けるおそれがあります。「土地の無償返還に関する届出書」の提出と、税務上問題のない水準の地代設定が重要です。
  • 消費税 居住用アパートの家賃自体は非課税ですが、建物の売却には消費税が課税されます。そのため、売却時の消費税申告の要否や、将来の課税事業者判定(基準期間の売上高など)への影響を事前に確認しておく必要があります。
  • 名義株に注意 オーナーの子供が会社を設立する場合、資本金は子供自身の資金で出すことが重要です。親のお金で出資すると、名義だけの株とみなされ、相続財産に戻されてしまうことがあります。
  • 役員報酬の実態 名前だけの役員で実際の管理業務をしていないと、報酬が経費として認められないことがあります。管理業務を実際に担ってもらい、業務内容の記録を残すことが大切です。
  • 借入金の引き継ぎ 建築時のローンが残っている場合、法人への引き継ぎには金融機関の厳しい審査があります。早めに銀行へ相談しておくことをおすすめします。

実行すべきかどうかの判断ポイント

課税所得が継続的に1000万円を超えて推移している場合は、法人化を検討する有力なタイミングの一つといえます。

まとめ

建物所有方式は、所得税・相続税の両方に効果が期待できる有力な節税策ですが、売却価格の設定や届出書の提出、資本金の出どころ、役員報酬の実態づくりなど、専門的な判断が必要な場面が数多くあります。 一つでも手順を誤ると、想定外の追徴課税につながるリスクもあるため、実行を検討される際は、不動産税務に詳しい税理士にご相談されることを強くおすすめします。

【免責事項】 本記事は、執筆時点(令和8年9月)の税制および関係法令に基づき作成しております。一般的な制度の解説を目的としており、個別の税務に関する確定的な判断を提供するものではありません。実際の税務判定や手続きにあたっては、お客様の個別具体的な状況によって取り扱いが異なる場合があります。本記事の情報を用いて行った行為により生じた損害について、当事務所は一切の責任を負いかねます。「建物所有方式」等のスキームの実行を検討される際は、必ず事前に税理士などの専門家にご相談の上、ご自身の判断と責任において行ってください。